街の書店、個性が生命線 ブックフェア生き残り策議論
2011年7月15日10時55分
東京・有明の東京ビッグサイトで7日から10日まで開かれた東京国際ブックフェアで、書店が生き残る道を探るシンポジウムやセミナーが数多く開かれた。 書店を調査するアルメディアによると、5月1日現在で国内の書店数は1万5061店。10年前と比べて5878店、約28%も減少した。長引く出版不況や 電子書籍の登場で危機感が高まる書店にとって、局面打開のヒントはあったのか。
■偏ったセレクトこそ
シンポジウム「いま改めて書店について考える」では、翻訳家の青山南さんが「大型書店で圧倒的スペースを占めているのが『売れている本』。品ぞろえ豊富 なアマゾンなどネット書店があるのだから、新刊書店には多くの種類がなくてもいいのでは」と発言。国立情報学研究所の高野明彦教授も「偏ったセレクトの方 が琴線に触れ、面白いものを見つけたと思える。最近の新刊書店にはオーラを感じない」と述べた。
受けて立ったのが京都市を中心に25店舗を展開する大垣書店の大垣守弘社長。「一般書から児童書、参考書、文庫までそろえ、街の人に雑誌を一冊でも買っていただく書店があることが出版文化の基本」と答えた。
「書店生き残りの工夫」と題して講演した書店チェーン「あゆみBOOKS」の鈴木孝信専務は、需要に即しながら個性を出すためにできるのが、企画展や フェアだという。東京・西荻窪にある系列書店「颯爽(さっそう)堂」では、身体論や精神世界のフェアを仕掛けて成功した。「一冊一冊の本という点を線にし て、魅力的な棚を作る。だから仕入れは生命線。特に既刊本の掘り起こしは大切です」
鈴木さんは電子書籍への対抗策も話した。「本は美術品とまでは言わないが、魅力的な商品。美的観点からセレクトして並べれば、電子書籍と差別化できる」
■読者との距離縮める
パネル討論「書店に求められる人材とは」では、書店員の資質、教育が議論された。配本された本を漫然と並べ、売れなければ返品できる制度に寄りかかって いる一部書店の実態を踏まえ、書店・出版コンサルタントの能勢仁さんは「かなりの書店は仕入れ(能力)不在。プロの仕事ではなくなった。顧客意識のある店 でなければならない」と指摘した。 「小さな本屋は街の文化発信基地」という観点も出た。福岡市で書店「ブックスキューブリック」2店舗を経営する大井実 さんは講演で、「書店は、いい本と読者を出会わせるお見合い産業」とたとえた。5年前に「ブック」と「フクオカ」を掛けた「ブックオカ」というイベントを 立ち上げた。市民が古本を売る「一箱古本市」や、人気作家を招いて読者との距離を縮める催しを続けている。
「作家も初版5千部、1万部という時代。例えば週末の金・土・日に福岡、熊本、鹿児島でサイン会をやれば、それだけで千部売れる。書店も潤う。地方にはそんな可能性もある」
■返品率減らす作戦も
出版界で大きな役割を占めるのが、書店と出版社をつなぐ問屋の取次会社。大手の日本出版販売(日販)の安西浩和専務は「書店競争力強化のために」と題して講演。日販が施策の柱としている、返品を減らした書店へのマージンアップについて説明した。
書店の取り分は通常、本の定価の23%ほどだが、日販と契約した書店では、返品率が40%を下回れば書店の取り分が増え、上回れば減る仕組みだ。返品に よる運送費や倉庫代などのコストを減らし、浮いた分の多くを書店に回して書店の競争力を高める狙いだ。 返品率は業界全体で40%前後だが、日販の契約書 店では3月時点で33.5%。返品を減らすには、お客をよく知り注文数を的確にすることが大事だと安西専務は強調した。(西秀治)
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